On bullshit

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美術展、行ってきた。『ユトリロ回顧展』 in 姫路市立美術館

2017/06/15
 

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観覧料:一般1200円、大学・高校600円、中学・小学200円(常設展示料含む)
観覧時間:1時間程度
 
記事目次
ユトリロの人生(省略版)
感想
 

 

ユトリロの人生(省略版)

 モーリス・ユトリロは19世紀から20世紀の画家で、パリの街角を描いた画家として有名だ。
 1883年に母親が画家という家系に生を受ける。学校を転校しつつも卒業し、職を得たがどれも長続きせず転々としていた。ついにはアルコール依存症になってしまった。
 
 医者の勧めもあって母親は絵を描かせてみた。するとめちゃくちゃ上手かった。以降は画家の道に進むことを決めた。画家としての母親の助言はあったもののほとんど独学である。それでも1909年にサロン・ドートンヌに初出品を果たす。このときは白を基調とした絵を描いており、後に「白の時代」と称された。
 白の時代の次には黒い輪郭線でバランスを保つ「色彩の時代」と呼ばれる時期もあった。
 
 しかしモーリスの絵が売れるにつれて母親と、そして母親と付き合っていた男が、絵が売れた金で高級な服や自動車を買うようになったという。またモーリスは娼婦などに暴言を吐かれていたようである。
 だからモーリスの絵の登場人物はみんな後姿だけが描かれている。全く表情が読み取れない。人間不信になるのも仕方ない。女性を描くときはおしりを大きく描いていたのも、ささやかな復讐である。
 
 1913年にはウジェーヌ・ブロ画廊で初の個展を開催。名声を得る。1928年にはレジオン・ドヌール勲章、1955年にはパリ名誉市民に選ばれた。
 その矢先、旅先のホテルで急死する。
 
 
 今回の『ユトリロ回顧展』はユトリロの作品74点(モーリスの使っていたパレットなどを含む)、母シュザンヌ・ヴァラドンの作品3点、母親と付き合っていたアンドレ・ユッテルの作品5点などが展示されている。ユトリロの作品がこれほどまでに集まる機会はなかなかないという。
 

 

 

感想

 展示作品のほとんどは油絵だ。油絵は色を塗り重ねて描くので盛り上がる。それが立体感を生じさせる。モーリスの絵はその上をいくように感じた。
 本展は主に左から右へ作品を鑑賞するが、作品を見るや否や、まるで自分が作品の通りを歩いているかのような錯覚を引き起こす。距離を詰めれば思わず作品内の建物に入ってしまいそうで、距離を離せば通りから遠ざかるかのような感覚に陥る。
 白の時代の作品は不思議だ。言い方は当たり前のように思われるかもしれないが、白色が白色じゃない。絵具としての白は完全に姿を消して、風景や建物としての白色になっている。自分は全く知らないのに、モーリスが愛したモンマルトルの街を歩いている。作品一つ一つに街が区切られた形で存在している!これはちょっとした驚きだった。
 
 日本で人気なのは枝などの描写にあるのではないかと思う。冬の木と夏の木は描き方が明らかに違う。そしてどちらも繊細だ。建物もガッチリと描いているわけじゃない。なのに建物としての重厚感を感じる。白色で重厚感を出すのは難しいんじゃないかと素人ながらに思う。
 決定的に、ユトリロのファンになった。ネットで観るユトリロと、間近で観るユトリロは絶対に違う。作品との距離もすごく近いので、ぜひ観てほしい。
 なお物販にはおなじみのクリアファイルなどの他に眼鏡拭きもあった。ブックマーカーは硬い素材が使われていて私好み。どれも買っちゃいました。

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