読書は鎮痛剤
慢性疲労や精神的な衰弱、未来に対する不安、イラつきなど、精神状態が安定しないというのは現代病にまで進化してしまいました。いろいろ栄養素を摂れとか、運動しろとか、単に休めとか対処法は書籍・雑誌・ネットの海に、まるでマイクロプラスチックのように漂っています。
私はそんなゴミの山から、手短にイラつきや不安を和らげる方法を一つ拾い上げています。読書です。事実読書は精神を落ち着かせる効果があるそうな。
人間はコミュニケーションをすることで自然から身を守り、糧を得てきました。読書はその延長や代替手段として考えるならば、人間に備わっているビルトイン・スタビライザーと言えるわけです。
難しい学術書よりも小説などをおすすめします。この記事を書いているときに読んでいたのは澁澤龍彦さんの『少女コレクション』でしたが、前に読んだリラダン『未来のイヴ』やフーケー『水の妖精ーウンディーネー』などが引き合いに出されていて示唆に富むものだと感じています。自分が気楽に読めるものであればなんでもいいのです。
話が変わりまして、私は読書をするとすぐに具体的なイメージが浮かんできて映画が上映され意識がトリップするのですが、これは現実から旅立つのに役立っています。何年も前に読んだ小説でも、主要なシーンは文章ではなく映像で再生できます。当たり前の作業だと思いますが、自分は時々それを思い返すのが好きなのです。
その材料となっているのは、
- 映画化された文学作品
- 西洋建築や服飾の写真集やそれらの歴史書
- 西洋人の顔
などです。
もちろん突き詰めればおかしな点はボロボロ出てきますが、文章で覚えるのが苦手な私にとってこれが最善なのです。
現実逃避の一種でもあるでしょうが、現実逃避は誰もがやる人生の乗り越え方だと思います。罪悪感はありません。むしろ苦しみから抜け出せないままのほうが罪というもの。エスケープしてやれっ。
まだ私は生きている。無間地獄にいるわけではありません。壁は上に空間があるから壁と呼ぶのであり、従って乗り越えられないということはない。穴は行き止まりがあるから穴であり、トンネルは向こう側に出られるからそう呼ぶ。際限のないものをト・アペイロンとか無限とか言いますが、そのような種類にあまり単語はありません。すなわち多くのものは有限なのです。
悩みもいつか露と消える。一時だけでも読書でもして、現実逃避してみてもいいではないか。
とかなんとか口を滑らせてまた紙をめくるのであった。