本、読み終えた。シュトルム『みずうみ 他4篇』
本書目次みずうみマルテと彼女の時計広間にて林檎の熟するとき遅咲きの薔薇解説本記事目次甘酸っぱい思い出を味わう法曹界に生きたシュトルム
甘酸っぱい思い出を味わう
こんな私でも甘酸っぱい思い出がある。高校の頃、必ずアメを持参していたので男女によくあげていた。そんな中で頻繁にねだる人がいた。クラスが同じ女子だった。背が小さかった。少しギャルっぽいのに頭は賢い。髪は派手過ぎず、ストレート。アヒル口がチャーミングポイント。よくナンパされるらしかった。事実、可愛らしかった
ある時から、朝に下駄箱で会えば必ず挨拶をしてくれるようになった。それだけで私は有頂天だった。と同時に挨拶だけでいらぬ勘違いをしてはいけないと思っていた。
幾月後の放課後、友達としゃべりながら校門まで歩いていた。すると校門に件の彼女が立っていた。私を呼び止めて、駅まで一緒に帰らへん?と言う。私は自転車で、彼女は電車での通学だった。私は自転車から降りた。
「なんか用?」
「別に」
「いや一緒に帰るんならなんかあるでしょー」
「別にいいでしょ」
沈黙。
「……アメいる?」
「今はいい」
沈黙。
学校から駅は歩いて十分程度だが、苦しかった。え、うそ?なんで?いやまさか、いやいや。いつも他の女子とはどんな話ししてたっけ?思い出せ!なんか話せよオレ!クソ!くそ!くそー!結局、何も話せないまま彼女を駅で見送った。
学年が上がり、クラスは別々になった。他のクラスとの合同授業がある時に、アメをあげるだけで終わりの関係になった。しかもそのまま卒業した。
よくある質問。もしタイムマシンがあったら?決まっている。高校の頃の私をボコボコにする。そして柔道部には入らずにバイトして、駅から二駅先にある映画館で二人分のチケットと二人分の夕食を買えるようなバイトをするように言う。
甘酸っぱい、甘酸っぱいなー。前置きが長くなりましたが、本書はそのような甘酸っぱい短篇から始まります。それが『みずうみ』です。わかっているのに言い出せず、取り返しのつかないことをしてしまうということです(泣)
法曹界に生きたシュトルム
弁護士の子として生まれ、生涯のほとんどを法律業務に従事したシュトルム。本書は初期の作品から選ばれたものが収録されています。なんといっても新鮮さがあります。凝ったものがなく、だからこそ余計にストーリー自体の甘酸っぱさが染み入ります。どれも短いので、数時間で読み終えると思います。
ドイツ文学ってよく詩を愛する人に伝えることが多い印象ですけど、どうなんでしょう。この本でも紡がれるんですが、詩は楽しみ方がよくわからんのです。