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本、読み終えた。浦島匡・並木美砂子・福田健二『おっぱいの進化史』

 

おっぱいの進化史 (生物ミステリー)

おっぱいの進化史 (生物ミステリー)

 

 

真面目な話です!

 

本書目次Amazon商品ページの目次を改変して転用)
PROLOGUE おっぱいとは何か?
 
CHAPTER1 おっぱいの中には何がある?
1-1 おっぱいのしくみと主要な成分
1-2 おっぱいのタンパク質
1-3 おっぱいに含まれる脂肪
1-4 おっぱいの糖=乳糖(ラクトース)
1-5 ミルクオリゴ糖
1-6 微量で大切なミネラル
 
CHAPTER2 哺乳類のおっぱい
2-1 哺乳類のくらしとおっぱい
2-2 ミルクオリゴ糖のちがい
2-3 さまざまなおっぱい物質
 
CHAPTER3 おっぱいで育つ動物の誕生 ~哺乳類の進化~
3-1 おっぱいは哺乳類に繁栄をもたらした
3-2 哺乳類の誕生
3-3 おっぱいの誕生
3-4 原初、おっぱいは皮膚を通して卵に送られた?
3-5 骨に見るおっぱいの進化
3-6 おっぱいタンパク質の獲得
3-7 ミルクオリゴ糖から哺乳類の祖先を知る
3-8 乳糖を消化する進化
3-9 おっぱい脂肪の進化
 
CHAPTER4 発酵乳のふしぎ
4-1 乳酸菌って何だろう?
4-2 乳と乳酸菌の切っても切れない関係
4-3 乳+乳酸菌=発酵乳
4-4 チーズ作りと乳酸菌
4-5 ヒトと乳酸菌
4-6 おなかに住む乳酸菌とヒトの健康
4-7 乳酸菌の潜在的健康リスク
4-8 ヒトと乳酸菌の未来
 
CHAPTER5 乳利用の歴史
5-1 おっぱいを与えてくれた動物たち
5-2 どうやっておっぱいをいただいたのか?
5-3 乳利用の移り変わり
5-4 乳製品の製法と歴史
5-5 日本の乳利用
5-6 乳にまつわるアラカルト
5-7 現在日本の乳製品とその利用法
 
COLUMN
・おっぱいはどこにある?
・オスは子育てに参加する?
・動物園の人工哺育
・おっぱいの神様
 
本記事目次
おっぱい
必要とされるミルク
進化史、かなぁ?
 
 

おっぱい

 乳ではなく「おっぱい」
私たちが赤ちゃんから育つ過程で必ずお世話になったのは乳ではなく「おっぱい」
男子諸君が思春期にお世話になったのも乳ではなく「おっぱい」
 でも本書が描くのはタイトルのように「おっぱい」というニュアンスではありません。完全に「乳」に焦点を当てています。筆者3人は全員専門家です。
 
 哺乳類が子育てするのに必要なのが乳です。人類だけではなく他の哺乳類の乳も解説していて興味深いです。たとえば動物ごとに母乳は脂肪が多かったり少なかったりするらしい。脂肪が多ければ早く成長できる。鉄分が多めに含まれているせいで赤い母乳もあるのだとか。蘊蓄が溜まりそう。
 
 

必要とされるミルク

 私が通っていた小学校では、ピロティ(1階が吹きさらしになっている部分)がありまして、その天井には照明がありました。その隙間にコウモリが棲んでいたのです。雷雨のような轟音になったとき、コウモリの赤ちゃんがよくそこから落っこちていました。
 誰かがその赤ちゃんを拾ってくると湿らせたティッシュを虫かごに入れて飼っていました。でも2,3日すれば死んでしまいました。長くて1週間。なにせ給食の牛乳しか与えていなかったから。さらに言えばコウモリにはコウモリの母乳が必要なのですね。長年の謎を本書がしっかりと説明してくれたと思います。
 
 ちょい待ち。「私たちは牛乳を飲んでいるじゃないか」
ごもっともです。でも認識の仕方は専門家のものとは少し違うようなんです。
 乳糖不耐症というものがあります。乳の中に含まれる糖分を分解できず、最終的に下してしまうアレです。人種や部族によって乳糖を分解できる人もいるらしいので差別化して乳糖不耐症と呼ばれています。
 しかし本来の乳は子育て中にしか飲まないものなのです。だから一定時期を超えると乳糖を分解する消化酵素(ラクターゼ)が働かなくなるのです。上手くできていますね。つまり乳糖不耐症とは正常な成長を表しているのです。だから牛乳は家族に飲ませないという医者もいるのですね。納得。
 本書は乳に関する疑問を解いてくれます。
 
 

進化史、かなぁ?

 目次を見たときからあまり期待はしていませんでしたが、歴史重視の本ではありません。Amazonの商品ページでは高評価(2017/04/17)ですが、私としては☆3つほどでしょうか。気になったところを挙げます。
 
  • 挿図がイマイチ。イラストばかりでなんだか萎えます。カラー図もありません。ただ筆者自身が撮影したものはやはり興味をそそられます。
  • わかりやすい説明と難しい説明が入り混じるので理解が難しい。たとえなども積極的に入れる姿勢がはっきりと表れていて良いと思います。それが不自然にぶつ切り感を生んでいるのは玉にキズ。難しいところは細菌の名前が一気に列挙されるようなところです。ここは譲れないという個所ではたとえ話は鳴りを潜めます。専門家として勘違いを生みたくはないのでしょう。本文に下部に注釈を入れるスタイルなのもうなづけます。
  • 進化史と呼ぶには化学的・生理学的記述が大半で、印象として歴史的な部分が少ない。進化史的な部分はCHAPTER3と5なのですが、「史」と呼ぶには随分サラリとした語り口でした。もっと重厚かと思っていました。
 
 以上のことから『おっぱいの進化史』というより『おっぱいの不思議』のほうが読後としてはしっくりきます。でもそれでは似たり寄ったりの本に埋没してしまうのでしょう。動物が好きな人は新たな発見があるかもしれません。