本、読み終えた。植村修一『不祥事は、誰が起こすのか』
本書目次
第1章 不祥事を育む土壌
第2章 偽装事件は平安時代にも―歴史に学ぶ
第3章 落とし穴にはまる企業
第4章 オオカミ少年が安全を守る
第5章 落とし穴にはまる人々
第6章 不祥事の種は大きく広がる
第7章 金融に不祥事はつきもの
第8章 不祥事をデータで捉える
終章 不祥事をどうやって防ぐか
記事目次
不祥事のオンパレード
起承転結に過ぎる
本書のタイトルの疑問は解消されない
近年の不祥事をおさらいしたい人にオススメ
不祥事のオンパレード
本書は主に日本の不祥事を近年から多く取り上げ、原因を観察しています。よって実際に起きた不祥事が所狭しと並びます。近年の不祥事に関しては調査報告書から原因を指摘している部分を引用してくれますので、なるほどと噛み締めることができます。第2章では短いながら平安や幕末の事件も取り上げています。
起承転結に過ぎる
見出しが細かく出て、一つの不祥事の文章がとても短いです。またその文章が回文のように出来過ぎていて飽きてきます。たとえば、Aという導入部分があれば、B→C→Aと必ず導入部分で触れたことに上手いこと絡めてきます。その作文技術はすごいのですが、全章を通してそれが行われると読み飛ばしたくなってきます。第4章~第6章は特にそれを強く感じます。
本書のタイトルの疑問は解消されない
不祥事は企業のどこにいる人間が起こすのか。これは直接的な、かつ魅力あることです。しかし本書のタイトル=本書の内容ではないと思います(?)というのも、全文を通して「誰が」というより、「何が」という視点になっていると思います。
終章で「不祥事防止のための十か条」を挙げています。
第1条 人は弱い。必ずミスをする
第2条 予兆を逃すな
第3条 システムにバグはつきもの
第4条 権威勾配の傾きに気をつけろ
第5条 挙証責任を転換するな
第6条 ルールは守れ
第7条 正論を大事にしろ
第8条 副作用には気をつけろ
第9条 組織文化を自覚しろ
第10条 大事なことを忘れるな
これを見る限り、組織論的な言及になっていると思います。個人的にこういう本で「誰が」という場合、心理学・倫理学・行動経済学などを持ち出すことになると予想するのですが、本書ではあまり見られません。やんわりとした言葉で指摘する程度です。
近年の不祥事をおさらいしたい人にオススメ
消極的な批判が多い感想になりましたが、不祥事を多く取り上げ、かつ短く詳細にまとめられています。近年起きた不祥事をサラッと知りたい方にはオススメです。不祥事の原因・予防について、もっと学術的な理論的構造を求めるなら他の本が詳しいでしょう。