本、読み終えた。本城靖久『馬車の文化史』
本書目次
第1章 古代の車と道
第2章 中世の旅
第3章 哲学者パスカルのベンチャー・ビジネス―乗合馬車会社の設立
第4章 有料道路の国イギリス
第5章 大旅行家・ペテン師・色事師―カザノヴァの旅
第6章 モーツァルトの旅―旅で磨かれた天才
第7章 マーク・トウェーンの旅―駅馬車は西部を走る
第8章 パリの交通事情と馬車
第9章 馬車から鉄道へ
本記事目次
馬車ってなんかいいよね
時代ごとの馬車
馬車のストーリー
文章がなんだか
馬車ってなんかいいよね
文学を読んでも、西部劇映画を観ても、かならず馬車が出てきます。文学では主に貴族の乗り物として、西部劇では駅馬車や幌馬車として登場します。文学では馬車を買うことを夢見る若者をよく見かけますし、馬車がないからみじめな思いをした人も描写されます。馬車はステータスでした。
西部劇ではコンコードというタイプの馬車として登場し、御者の座席の下に預けてある乗客の金品を奪うのが通例でしょうか?実際には御者も乗客も殺されるようなむごいことは稀だったようですが。馬車は事が起こるスイッチでした。
現在、人を遠くに運ぶのは飛行機、自動車、船、自転車が主でしょう。契機となった蒸気機関車を初めて実用化させたスティーヴンソンが活躍するのは、19世紀になってから。その前まで世界最高の乗り物は馬車しかありませんでした。馬車が世界を動かした・創ったと言っても過言ではないでしょう。
時代ごとの馬車
「楽しみ、それはビール。不愉快なもの、それは旅」
(古代シュメール人の格言)
馬ではなく牛を使った、馬車ならぬ牛車が登場したのは紀元前2500年ごろとのこと。この本を読む限り、上の格言は中世ヨーロッパでも通用することになります。
車輪は木製で、鉄や革を巻いただけ。車体にスプリングもなし。そのような状態の馬車が荒れた路面を走る。しかも旅の道中は猛獣と賊にも気をつけなければならない。旅と馬車が敬遠されたのもうなずけます。
本書では進化していく馬車がおよそ時代ごとに語られていくので、なかなか楽しい。
またいろいろな馬車も端を折りながらですが紹介されています。二人乗りタイプとか、四人乗り、バス等々(それぞれ名前があります)
馬車のストーリー
目次にもある通りパスカル、カサノヴァ、モーツァルト、マーク・トウェインが体験した馬車に関する話も紹介されていて、そこは詳述されています。馬車の旅の大変さを感じるならこれらの章がよかったです。
馬車自体の話や道路事情、宿といった話は他の章がいいです。
文章がなんだか
この本はトヨタのPR誌『自動車とその世界』の中で連載されていたものが基になっているらしいです。
文中で「~~という次第」などの体言止めが変に目立った印象があります。またあまり時系列順とか国ごとといったように体系的に語られるわけではないので、そういう意味では読みにくいかもしれません。
筆者は19世紀の馬車については以下の本を薦めています。