On bullshit

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本、読み終えた。ダロン・アセモグル&ジェイムズ・A・ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)』

 上巻の感想は以下から↓

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国家はなぜ衰退するのか(下):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ文庫NF)

国家はなぜ衰退するのか(下):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ文庫NF)

 

 

  

目次(下巻)
第9章 後退する発展
第10章 繁栄の広がり
第11章 好循環
第12章 悪循環
第13章 こんにち国家はなぜ衰退するのか
第14章 旧弊を打破する
第15章 繁栄と貧困を理解する

 

 

 こんにちの国家の政治的・経済的破綻の解決策は、収奪的制度を包括的制度に変えることだ。悪循環があるために、それは容易ではない。だが、不可能ではないし、寡頭制の鉄則は不可避ではない。制度のなかにすでに存在する何らかの包括的要素か、既存の体制への闘いを率いる幅広い連携の存在か、はたまた、たんなる歴史の偶発性が悪循環を断ち切ることもありえる。

(P206)

 

 

 読み終えてすぐに思ったことは2つ、
  1. 「やっと読み終えた」
  2. 「果たしてそうだろうか?知識がないから確信が持てない部分がある」
でした。
  • 上巻と下巻合わせて600ページ近くある大作であること。
  • 具体的事例を述べるスタイルですので文章自体は難しくないにもかかわらず、知らない歴史エピソードを次から次に語っていくので意外と疲れるということ。
この2つによって骨が折れます。だんだんと興味がなくなっていき、若干食傷気味になってしまいました。途中から国家を会社や家族などに置き換えて楽しみました。
 
 下巻でも世界各国の歴史を紐解くことで、国家の衰退と繁栄の原因は制度に由来することを主張しています。しかし私がしっかりとした深い知識を持っていないがために、著者たちの主張を一度受け入れる必要がありました。
 それでも疑問は残ります。たとえば、古代ローマの共和制から帝政へ移行する場面も搾取的制度の引き合いに出していますが、果たしてそうでしょうか?古代ローマの共和制はカエサルが帝政にしようとして暗殺され、それからアウグストゥスが初代皇帝となってパクスロマーナ(ローマの平和)を迎えました。帝政になったときでも共和制の形態を残していた中で、どこがどのように搾取的制度であったのかよく知りたいと思います。
 そしてどうやらこの本の理論の裏には膨大な統計が隠されているようで、それらは組み込まれていないとのことです。それらを含めたいくつかの学術論文は以下で読めるみたいです。この本をしっかりと見極めるためには、世界中の歴史を読み直し、著者らの統計データをも検討しなければならないでしょう。
 
 
 この本の理論を簡単に突き詰めてしまえば、
「人間が決めたことが国の運命を左右することがある」ということです。繁栄の好循環に突入するために著者たちが掲げた条件は多く厳しいものでした(エリートの分散など)
それでも悲観的なものではないと言っています。
 
 国家の繁栄と貧困の原因を地理や環境、人の賢さなどではなく制度だと主張することで、安易な結論に到達することを踏みとどまらせてくれる。そのことを敢えて経済学的・統計学的なデータを省き、歴史的記述で埋めることによって一般大衆に知らせてくれた本書は、価値あるものだと思います。
    時間がないという方は「第15章 繁栄と貧困を理解する」を読むだけでも良いと思います。本書の主張が理論的にまとめられています。