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本、読み終えた。ローデンバック『死都ブリュージュ』

 

死都ブリュージュ (岩波文庫)

死都ブリュージュ (岩波文庫)

 

 

 この情熱研究の書において、ともかく私はとりわけ一つの「都市」を呼び起こしたいと思った。人々の精神状態と結ばりあい、忠告し、行為を思いとどまらせ、決心させる一人の主要人物のような「都市」を。(はしがき冒頭より)

 

あらすじ

 

 ユーグ・ヴィアーヌは愛する妻に先立たれ、ブリュージュに引っ越して5年が経っていた。そんなとき、亡き妻にそっくり、いやそのままの妻を目撃する。

それはジャーヌ・スコットという女だったが、関わり合ううちに妻と違うところが露呈していき……という話です。

 

感想

 

 始めはつまらないのですが、ユーグが大切に保管している妻の遺品というものはなかなかのものです。

妻の髪の毛を切り取ってケースに保管しているほどですからね。

そこへ、髪も声も体も顔もそっくりの最愛の人が歩いているのを目撃する。

ユーグと同じように誰もが後を追うはず。

でも、同じ人間というものは、いないんですね。

 

類似ということがなければ、彼の眼にジャーヌは下卑た女としか映らなかった。(P82)

 

 あらすじを見てもわかるとおり、全然ハッピーエンドじゃありません。

都は宗教的に喪に服することを提示してきます。

 

だが、「町」は信心深い女のような顔つきをして彼を咎め、執拗をきわめた。(P127)

 

とするとユーグはどうするべきなのか。

明らかですね?

 

独特の空気感

 

 小説の空気感はジャン・コクトー恐るべき子供たち』、あるいはサガン悲しみよこんにちは』、カミュ『異邦人』などに似ているという印象が残りました。

あくまで空気感だけの類似で挙げるとそうなります。

かといって幻想小説に分類されるわけでもありません。

小説に独特の空気感、いや空虚な感じを求める方にはいいかもしれません。

 

恐るべき子供たち (岩波文庫)

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