本、読み終えた。川畑秀明『脳は美をどう感じるか――アートの脳科学』
本書目次
はじめに
第一章 アートの脳科学とは何か
第二章 脳の中に美を探して
第三章 アートの進化をたどる
第四章 創造性の源泉――脳の発達と病
第五章 アートに習熟する脳
第六章 アートの法則性と美の行方
おわりに
山より
雨天決行登山の雨上がり。
自身は雲と、水蒸気の間に浮かぶ山中にある。
白かった世界に薄く色が着く。
下界にかかっていた雲が薄れていき、水蒸気に包まれた町が見える。
それでも白雲が横たわる。
遠くの山々は一時、山水画だった。
世の中を『上手く』隠すもんだ。
美を紹介する仕事と美を創作する仕事
自然の中で現象の猛威に晒されると頭が痛くなるときがあります。
どうしようか考えて普段使えていなかった頭が、古い洗濯機のようにヘタクソよろしくでガタガタ動くからです。
大変な目に遭わないと見られない景色がそこにはあります。
山岳カメラマンになるとガチガチのダウンジャケット&パンツで-20℃の中じっと待っているなんてことは普通にあるようで。
自然を相手にするカメラマンには頭が下がります。
登山道から外れた人知れずの場所を撮影するカメラマンもいるほどです。
山岳写真家・杉村航さんのことです。
https://funmee.jp/articles/5614b08dfb970d2daeb844564c80048fefc2a8bf
美を抉り出す人がカメラマンなら、画素センサーに直接美を付与するのが芸術家になるのでしょうか?
本書が明かす美
美しいと思うものを取る・撮る・採る・捕る。
人間には美を追究する面があります。
美とは一体何か。
(ブログ主の自宅水槽。コケを放置している)
(家族の携帯で撮ったもの。最近の携帯はすごいな~)
アート/美術は視覚の神経科学的な法則に従うというのが本書の提言する仮説であり……(P53)
と言うように筆者の専門は認知神経科学、感性心理学です。
慶應義塾大学HPを閲覧すると文学部名誉教授として、実験心理学・神経科学・生物心理学が研究分野として掲げられています。
ですので美を哲学するというよりは美を感じている脳を観察する内容です。
最初は美への社会的関心から
↓
美的感性の個性(個の美)
↓
洞窟絵画からみた人類史における美(全の美)
↓
病や異常による美的感性の変化(歪な美)
↓
美の派生的変遷という順番でみていきます。
脳科学研究でわかったこと、心理学でわかったことを中心に美が語られていきます。
特に面白かったのは、鳩です。
鳩の審美眼
モネの絵(印象派)とピカソの絵(キュビズム)を見せて、モネの絵を見せたときにそれをつつくと餌がもらえるようにする。
すると実験時には見せていなかった絵にもしっかりと反応を示したという。
そればかりか、印象派のルノワールとキュビズムのブラックの絵をも見分けるようになったというのです。(P109)
これにより1995年にイグ・ノーベル賞を受賞したのが渡辺茂さんです。
こちらのほうが詳しいでしょう↓
ハトがピカソとモネの絵を見分ける!?動物から学ぶ人間の心理:渡辺 茂氏【イグノーベル賞インタビュー Laugh and Think 第5回】 | 製造/建設エンジニアの情報サイト「Tech Note」
これは第三章の『アートの進化をたどる』で記述される部分ですが、面白いですね。
ハエトリグモの求愛ダンスは知っているでしょうか?
種類によっては前肢をピーンピーンと挙げたり、横にチョコチョコチョコチョコ動いたりします。
愛らしく映るとともに完成された動きのように思います。
色、形、動き、音、香り、味、触感、美を感じるには五感が必要です。
それらが備わっていても、子どもの頃に連れていかれた美術館や博物館は、興味がなければ退屈なものでしかなかったと思います。
でも今となっては作者にさえ想いを馳せる。
時?というような美しさ?があるのかもしれません。
職人は美しいですね。
頭が痛くなる活動は自分がするべき活動
思うに、普段使っていない頭が働いて痛くなる作業というのはやるべきことだと思います。
気が向いたときだけ、自分もヘタクソながら絵描き・楽器をしています。
いい感じに頭痛がしてきます。
自分の進歩のなさなのかどうかは別として(苦笑)
私が好きなのは浦上玉堂、ヴォルス(アルフレート=オットー=ヴォルフガング・シュルツ)、モーリス・ユトリロ、ジョン・エヴァレット・ミレーとかですかね。
絵画を通して繊細さを感じられるのが良いです。
美術って「たまには観に行くのもいいか」ってなりますよね。
そういう動機のものは、人生の隙間を埋めてくれる大事なものだと思っています。