映画、観た。『トレインスポッティング』
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映画の冒頭でレントンはこう言う。
「人は人生に何を望む?出世、家族、大型テレビ、洗濯機、車、COプレーヤー。レジャーウェアにレジャーバッグ、ネットで買う三つ揃いのスーツ、単なる暇つぶしの日曜大工、ジャンクフードを口に押し込みながらカウチに座って観る世にもくだらないクイズ番組。挙句の果てには老人ホーム行き。腐った体をさらし、自分の分身であるガキどもに疎まれる。それがいわゆる豊かな人生…。だが俺はごめんだ」
この映画は90年代のイギリスのドラッグ事情を描いている。4人の人物が主軸となっている。だが全員クズのろくでなしだ。全員が何かしら麻薬に手を染めているからだ。
さてこの映画を何で知ったかというと、トレラン雑誌である。
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実は20年ほどの時を経て、続編が今年出たのである。
『T2 トレインスポッティング』だ。
レントンは薬を絶ったものの、今度はエンドルフィン中毒になっていた。すなわち運動によって得られる快感の中毒者になっていた。昔とは大きな違いである。続編のPVではこんなことが言われている。
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続編ではかつての仲間スパッドが、レントンと一緒にトレランするシーンがあるらしい。ここでようやくトレランと繋がるわけである。
確かに気持ちはわかる。登山でもトレランでも、もうたくさんだ!と思う。でもいつの間にか登山計画を立てている自分がいる。快感を得るための装備を買って喜んでいる。
苦しいと思ったことはしたくない。もしそうならスポーツは発展しなかっただろう。必ず、またやろうかな!と閃いてしまう瞬間がある。そんな人たちが集まってスポーツになっている。
トレラン雑誌では快感を求める点ではスポーツも薬物も似ているんじゃないかと指摘している。
今回の映画は思想が一点に固く集まるようなものを感じることがなかった。むしろグチャグチャにされた気分だ。それは構成にある。
誰でも自由になりたいと思って生きるが、完全な自由は退廃的か法的にアウトかしかない。レントンは映画冒頭で活きのいい笑い方をしていたがそれは警察に追われている最中だった。ラストで真っ当に生きようとするシーンでは穏やかにニヤリとした微笑みを浮かべていた。どっちの笑い方をするのが良いのだろうか?
レントンが冒頭で言った言葉が、ほとんど同じ形でラストにもう一度言われる。
「これを最後に足を洗って、俺はカタギの暮らしをする。楽しみだ。そう、アンタと同じ人生さ。出世、家族、大型テレビ、洗濯機、車、CDプレーヤー、健康、低コレステロール、住宅ローン、レジャーウェア、三つ揃いのスーツ、日曜大工、クイズ番組、ジャンクフード、子育て、公園の散歩、通勤、ゴルフ、家族でクリスマス、年金、税金控除、庭掃除。そうやって平穏に暮らすのさ。寿命を数えながら……」
だからといって麻薬中毒になれなんて言えない。しかし自分の現状に揺さぶりをかける映画であることは確かだ。
昔の時分はどこにでも行った。木登りもしたし、暗渠にも入った。ハチの巣をBB銃で撃ちまくった。肝試しもした。度胸試しもした。無茶をして怒られた。
今はどうだろう?たくさん気にかけている。家族、法律、ルールとマナー、伝統、因習、国民性、キャリアと年齢。結局自分は二の足を踏んでいるのでは…?
僧「悟りはあるのですか?霊魂はあるのですか?時間は有限ですか?それとも無限ですか?…etc」道元「たとえば今ここに毒の矢を受けた者がいるとしよう。誰に?いつやられたか?といったことがわからないと矢を抜くことができない。するとその者はどうなる?」僧「死んでしまいます」道元「君も同じだ。そのようなことを考えているうちに、君の人生は終わるだろう」
考え抜いて偉くなった人もいれば、行動し続けて尊敬される人もいる。それとも両方をやっているからすごいのか。世の中なんとも不思議である。