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On bullshit

読書感想文、社会評論、その他を自分勝手に。

思ったこと 感じたことを そのままに

本、読み終えた。レベッカ・ゾラック『図説 金の文化史』

 

図説 金の文化史

図説 金の文化史

 

MONEYではなくGOLDのお話。

 

本書目次
序章 金を求めて
第1章 身につけられる金
第2章 金と宗教、権力
第3章 貨幣としての金
第4章 芸術の媒体としての金
第5章 錬金術から宇宙まで―科学における金
第6章 危険な金
 
本記事目次
逃れられない、金
本書の特徴
追う者と、眺める者
巡り巡る金
 
 

逃れられない、金

 心理学の実験で、赤ん坊のころから人間は金色が好きだということがわかっています。確かに子どものおもちゃって金色(黄色?)が多いイメージ。
 
 
 それから成長して、電子部品が組み込まれた機械を操作して、ときには絵を描き、美術館にも行く。飾りには金メッキが施されたものを身に着けたりする。金自体を買う人もいる。そして金の価格に左右される。
 私たちは無意識のうちに金を使っています。金の恩恵にあやかっていない人がどこにいるでしょうか。
 本書では紀元前から使われてきた金の文化史を、
  1. 宗教
  2. 芸術
  3. 科学
の3点から語るものです。
 
 

本書の特徴

 カラー図説なのがありがたい。絵画・仏像・出土品・資料としての新聞や現代の科学装置、全てをカウントすると108ありました(間違ってたらごめんなさい。100は超えてるのは確かです)
本文が224ページなので相当の図説があることがわかります。これらを鑑賞することによって、読者も金の魅力に振り回されることになるでしょう。
 本文は出来事ごとにぶつ切りの感が否めません。そのせいで情報収集っぽい感覚になりました。ただ本書は英国のReaktion Books刊行のThe Earth Seriesの1冊とのこと(訳者あとがき参照)
日本人受けするような語り口の渡来物とは趣向が違うと思われます。
 
The Earth series is the first of its kind to trace the historical significance and cultural history of natural phenomena and resources. Written by experts who are passionate about their subject, books in the series bring together representations from mythology, religion, art, literature, science, popular culture, cinema and television, exploring and explaining the world around us in an exciting new way.
 
 
 

追う者と眺める者

 本書を読むとこの2タイプ間のやりとりを見て取れます。
 宗教としての金は、キリスト教においてはかつて、教徒からみれば聖職者が虚飾にまみれているように見えました。聖職者は書物に金が描かれているせいで、金について解釈に解釈を重ねなければなりませんでした。そしてそれを目の当たりにした教徒はむしろそれが聖職者にとって正しい姿の在り方なのか疑問視しました。聖職者の道具も金が含まれていますからね。
 芸術にも金は使われました。といっても宗教的か政治的かではありましたが。本書では宗教芸術として主に絵画と仏像がカラーで掲載されています。どれもこれも美しく、神秘性が喚起されるのも納得です。ただ金に群がるヨーロッパ人を不思議に眺める民族の話もあり、金は欲する人には輝いて見えることが強調されます。
 科学が発達すると金を見つけるのではなく、作ることはできないかという発想になります。錬金術師の登場です。錬金術師は怪しげなイメージを思われがちですが、実際に科学に貢献したのも事実です。たとえばリンを発見したのは錬金術師です。人のオシッコをかき集めて、煮出して金を作ろうとしたのです。脱帽。普通は考えない。黄色いからでしょうか?しかしアステカ族は金を「神々の排泄物」と呼んでいたそうなので、文化史的には理解できそう(?)
科学史に輝く偉人が錬金術師だったというのもよくある話です(ニュートンとか)
 金は人の行動を大胆にします。
 金鉱が発見されれば原住民を殺して、大量の白人が流入したという歴史は第6章から。どうしてこうなるかと言えば金を高値で買う人がいるから。それで酷使されたのは老若男女、人権、倫理、環境と様々。今でも少量の水銀使用による採掘は禁止されていないという。
 
 

巡り巡る金

 人が金に振り回されてきたおかげで、私たちは素晴らしい芸術を鑑賞できます。誰かが危険な鉱山労働をして金を採掘したから、機械を使えます。高齢者が相続税対策とかで金に何十万、何百万と払っていて、自分には関係ないと思っていても、知らないところでお世話になっています。
 原油だってそういうタイプ。原油を使って製造する製品はたくさんあります。これがなければ車は走らないし飛行機は飛ばない。配達のトラックも来ない。いやアスファルトの道路だって歩けない。容器に水を入れることさえままならないかもしれない。そしてその価格は遠い国で起こっていること次第でもあります。
 私たちはあらゆるものを地球から採取・加工して暮らしています。結局金だろうと何だろうと行き着くところはそこなようです。これは飛躍して言えば地球ありきの私たちということなのです。本書の最後に指摘されているように、金の結婚指輪を本当に愛のシンボルにするには、書かれている史実を知らないでいるか、あるいは……。
 
 
地球からあらゆるものを採取・加工して暮らす人の話はこちら↓(お気に入りなんでゴリ押し)