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柔道の新ルールについて:「有効!」と「技あり!合わせて一本!それまで!」が廃止!?(訂正あり)

柔道の新ルールでどう変わるか。経験者からみた感想を書きます。

2017/11/08追記

 「技あり合わせて一本」は復活することが決定したらしいです。日本では来年の春の全日本選抜体重別選手権から新ルールが適用されます。

 他にも指導等の変更はあるものの、「技を積極的にかけさせる」というスタンスは崩れていません。

 なお、日本側から要望があった「有効」の復活は見送られました。

 

詳しくは日本柔道連盟HPにある資料を参照してください。

http://www.judo.or.jp/p/40127

↑このページにある、

http://www.judo.or.jp/wp-content/uploads/2017/03/ce52948bab3c7eecd73931288d15662d-1.pdf

↑この資料です。

 

本記事目次

試合時間の短縮ーより戦略的スポーツに
「有効」と「技あり合わせて一本」の廃止ー量より質
抑え込み時間の短縮ー影響はあまりない
指導回数の上限の減少ー影響はあまりない
総合評価ー賛成。柔道がより迫力あるド派手スポーツになる可能性がある

 

 

 ふわぁ、よく寝た。玄関に落っこちている朝日新聞を拾い上げると、眠気は一気に吹き飛んだ。柔道の「有効」と「技あり合わせて一本」が廃止だというのです。

 中学高校と柔道を経験した身としては黙ってはいられません。経験則から場合分けして考えてみます。

 

 まず前提としてどのように変わるのか、朝日新聞がまとめてくれていますのでそちらを参照します。

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(2016/12/11 朝日新聞朝刊より)

 

正直言ってめちゃくちゃ変わると思います。試合開始から戦局→試合終了の時系列でどこが大きく変わるのでしょうか。

 

 

試合時間の短縮ーより戦略的スポーツに

 4分に短縮するのはものすごく大きいです。5分の場合残り1分はかなりヘトヘトです。ミスを狙って勝つ、泥沼な戦いが多いのがここです。外国人選手がへばっているのをよく見かけるのもここらへんですね。ですが日本人選手も体力の限界なのがほとんど。

 短縮されるのは体力面では助かりますが、戦術にはかなり影響すると思います。たとえば有効や技ありを取った選手は寝技が長引くことがよくあります。タイムアップまで時間を稼ぐわけです。寝技や関節技はどこに力を入れれば防げるかわかりやすいことが多いので、どっちも押し合いへし合いで時間だけが過ぎていくということが多いからです。

 ではお互いまだポイントを取っていない場合はどうでしょう。なるべく早くポイントを取ったほうが有利なのは相変わらず。それに重圧をかける形で試合時間1分の減少。技をかけようと拍車がかかるのは自明です。

 しかし選手にとっても良い面があります。それは試合時間中体力をフルパワーで使えるという面です。そして戦略面でも、どのように時間を使うかではなく、どのようにして勝つかに絞られそうです。つまりより相手選手の研究が重要視されそうです。悪い面としては次の試合までの時間が短くなる→回復などの処置時間が短くなる、ということです。

 個人的な経験としてはこれには賛成。試合時間終了間近は本当にヘトヘトでして(笑)投げられないようにするだけで精一杯なんてことも。ただし、試合と試合の間にお互いが休憩できるインターバル時間が設けられなければ、この変更は最大限の効果にはならないでしょう。

総合して、試合時間が短縮されるということは、より戦略的になるということでしょう。

 

 

「有効」と「技あり合わせて一本」の廃止ー量より質

 私はかつて、技ありを取られた後、有効を5回取って負けたことがあります。明らかに相手がへばっていても確実に投げなければ勝てないということを経験しました。有効はいくらとっても有効なのです。では今回の変更でどうなるでしょうか。

 「技あり合わせて一本」が廃止されるということは、技ありが有効レベルにまで評価が落ちるということです。技ありは感覚的には体の側面から床に落ちたら技ありです。つまりもう少しちゃんと投げていたら背中から落ちて一本なんです。そういうと今回の変更はより一本重視にみえます。

 ですが、世の中には投げられ上手な奴がいます。私の後輩にいたのは思いっきり一本コースの投げ筋だったのに、体をひねってしっかりと足裏しか床についていない奇妙な奴でした。自分と相手の体を密着させて自分も床についていくようにしないと一本を取れないような厄介な奴でした。

仮にそういう選手がオリンピックにも出場したとしましょう。技ありを5回取られても最後に一本で逆転勝ち。なんてことがあったらどうでしょうか。今回のルール変更の目的には観客が理解しやすいようにというものもあります。有効ならまだ仕方ないかで済んでいたものが、明らかに投げられている技ありに変わるのはどうでしょう。少し理解が難しいのでは。とはいってもオリンピック選手がそう何度も技ありを取られるのはないと思いますし、微妙な評価という意見もあると思います。いずれにせよ選手は技の質にこだわる必要に迫られそうです。

 では逆転の発想です。こちらが狙いなんだと思います。いくら技ありレベルでも試合が終わることはありませんから、投げまくる。イメージするにこれはプロレス状態。派手に投げまくってしっかりと投げ切ったほうが勝ち。なるほどわかりやすい。これなら観客も湧きそうです。

 

 

抑え込み時間の短縮ー影響はあまりない

 抑え込みというのはがっちり決まると本当に逃げられません。よくひっくり返すように言われますし、できるように見えがちですが揺れに対処すれば大丈夫です。数秒暴れて、無理だと自覚できますので。

 

 

指導回数の上限の減少ー影響はあまりない

 そもそも何回も指導を受ける選手のほうに問題があるわけで、しかも4回も指導を受ける選手はほとんどいません。

 

 

総合評価ー賛成。柔道がより迫力あるド派手スポーツになる可能性がある

 有効は一度取られても「取り返さなきゃ」という意識、技ありは「クソっ!ヤバい!」という意識ですが、無闇に突っ込んで自爆するのもバカバカしいのです。なので少し心理的に躊躇してしまいます。それが「大丈夫。技ありまでなら許す。かけまくれ!」と指示されれば良いモチベーションになると思います。

 私が現役のときにこのルールに変わっていたらより攻撃的になっていたと思います。日本柔道の指導者は「もっと技かけろ!」という、ドラクエ的に言えば「ガンガンいこうぜ」の精神が根強いので、日本の指導的にもマッチします。しかし柔道の体罰問題やイジメ問題などを醸成する環境が許されるような雰囲気が現場に復活して、再び再燃しないように十分注意しなければならないと思います。攻撃的になればケガを負うことも多いですから。

 私の先輩のように後頭部から床に叩きつけられて病院送りにされたり、友人のように技を無理やり防がれて腕の骨が皮膚を突き破るなんてことがあります。攻撃的なスポーツになるということはそういう危険が高まるということです。日本柔道は現場を安全に、攻撃的にする意識改革の必要がありますから、観客にしてみれば嬉しいものの、現場は難しい教育に迫られるでしょう。