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On bullshit

読書感想文、社会評論、その他を自分勝手に。

思ったこと 感じたことを そのままに

本、読み終えた。トニー・ぺロテット『驚異の古代オリンピック』

 

驚異の古代オリンピック

驚異の古代オリンピック

 

 

 

 

 

本記事目次
第1章    ゼウスに愛をこめて
第2章    スポーツに溺れたギリシア人
第3章    カウントダウン
第4章    オリンピック訓練所―ギムナシオン
第5章    スポーツファンの苛酷な試練
第6章    競技場周辺の空騒ぎ
第7章    栄光をめざして―開幕!
第8章    血に染まるトラック―戦車競争
第9章    サバイバルの五種競技―ペンタスロン
第10章    勝利の晩餐
第12章    聖なる食肉市場
第13章    芸術を愛さざる者、立ち入りを禁ず
第14章    不朽の名声を求めて
第15章    聖地に降った槍
第16章    忘れられた女神たち
第17章    勝利か死か―格闘技
第18章    医師たちの苦悩

第19章    宴のあと

 

本記事目次

積み上げた情報による細やかな描写
まさしく驚異
事情は現在と変わらない?

 

 

    この本は様々な角度から読み解いてわかった古代のオリンピックを描写しています。
読み終えてどうだったか。
「現代のオリンピックって面白いのだろうか?」
そう思ってしまうほどこの本に描いてあるオリンピックは面白かったです(ただし壮絶)
第1章のたった17ページを読んだだけで古代の熱狂に引き込まれました。臭くて暑い劣悪な環境でも観戦したくなる競技とはどのようなものだったのか。イメージできるところまで再現されており、ロマンが膨らみます。
 
 
 

積み上げた情報による細やかな描写

 古代のオリンピック競技ですから、不明なことは多々あります。それでもパピルスや壺、壁画などから情報を積み重ねて、競技の概要や会場の雰囲気がわかるところまできているようです。それらにおける説明はアカデミックな論調ではなく、むしろノンフィクションのよう語り口なので、映画のワンシーンさながらのリアルな情景が浮かび上がってきます。古代オリンピックを強烈に感じることができます。
 
 

まさしく驚異

 男色の解説がときどき出てきて興味深いです。美少年に送ったおじいさんの恋文などが発見されているようで、当時は珍しくなかったらしいんです。水に反射した自分の顔に陶酔したナルキッソスを思い出します。
 また娼婦もたくさん集まったそうです。オリンピック期間だけで1年分の稼ぎを出したとか。そして出場選手はその誘惑をなるべく遠ざけるのに苦労する(笑)
 次にオリンピック会場ではなんでも買えたそうです。
エジプトやアフリカからも集まった料理、商人が売りにくるガラクタから高級商品、奴隷まで。
 そして詩人はかつての優勝者などを詠い、哲学者はオリンピックの愚かさを非難し、コーチは自分のトレーニング法を売り出す。
 
 

事情は現在と変わらない?

 たとえば政治や金の問題。オリンピック期間は戦争が一切禁止の代わりに、内情はドロドロだったようです。審判を買収する話題が多かった気がします。暴君で有名なネロ帝は審判全員を買収したため、落馬したにもかかわらず優勝したそうです。そしてネロが死亡すると優勝者リストから消されたという事実は、古代ギリシア人の感情が垣間見えます。
 そして審判の問題。
出身が同じ選手を勝たせたりするという問題。しかし後の協議でそれが覆され、審判が罰金を支払う事態になったことも書かれています。
 
 
 
 オリンピックが開催される年になると慌てて会場を整備したり、物品をそろえるのに苦労したりと、古代オリンピックは現在と変わらないようでした。しかし今は牛を御供えしたり、血みどろの戦いをするようなことはありません。ゼウス像に誰が勝った負けたを報告することもありません。それでも古代オリンピックに憧れたのは、老若男女がほぼなんでもアリの状態だったからだと思いました。
 
    改めて「現代のオリンピックって面白いのだろうか?」
招致活動におけるIOCの賄賂漬け、選手のドーピングなど、古代にあった問題が高度になっただけに思えてきました。古代は女性が参加できなかったりして、不十分ではありました。しかし純粋な熱狂は古代のほうが上だったでしょう。古代の選手が踏んだスタートラインである石は、今もそのまま残っています。踏んでみたいな…。