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On bullshit

読書感想文、社会評論、その他を自分勝手に。

思ったこと 感じたことを そのままに

本、読み終えた。ナシーム・ニコラス・タレブ『ブラックスワン 不確実性とリスクの本質』

 

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質

 

 

 

ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質
 

 

 

本書目次

【上巻】
プロローグ
第1部 ウンベルト・エーコの反蔵書、あるいは認められたい私たちのやり口
第1章 実証的懐疑主義者への道
第2章 イェフゲニアの黒い白鳥
第3章 投機家と売春婦
第4章 千と一日、あるいはだまされないために
第5章 追認、ああ追認
第6章 講釈の誤り
第7章 希望の控えの間で暮らす
第8章 ジャコモ・カサノヴァの尽きない運――物言わぬ証拠の問題
第9章 お遊びの誤り、またの名をオタクの不確実性

第2部 私たちには先が見えない
第10章 予測のスキャンダル

索引

【下巻】
第11章 鳥のフンを探して
第12章 夢の認識主義社会
第13章 画家のアペレス、あるいは予測が無理ならどうする?

第3部 果ての国に棲む灰色の白鳥
第14章 月並みの国から果ての国、また月並みの国へ
第15章 ベル・カーブ、この壮大な知的サギ
第16章 まぐれの美
第17章 ロックの狂える人、あるいはいけない所にベル型カーブ
第18章 まやかしの不確実性

第4部 おしまい
第19章 半分ずつ、あるいは黒い白鳥に立ち向かうには
エピローグ

謝辞
訳者あとがき
参考文献
注解
用語集
索引

 

本記事目次

本書引用文

白鳥と黒鳥

ありえない

意外に深刻だ

しかし気怠い

 

本書引用文

我々は、有形なもの、確認できるもの、触れるもの、具体的なもの、見えるもの、既知のもの、明らかなもの、社会的なもの、埋め込まれたもの、感情を込めたもの、目立つもの、紋切り型なもの、動くもの、芝居じみたもの、化粧、公式なもの、学者風の用語 (b******t)、尊大な経済学者、数学化されたゴミ、飾ったもの、アカデミー・フランセーズ、ハーバード・ビジネス・スクール、ノーベル賞、黒いビジネススーツと白いシャツとフェラガモのネクタイ、進展する会話、けばけばしいもの、といったものを好む。とりわけ、我々は物語られたことを好む。
我々―現在の人類―は、抽象的なことを理解する力に欠ける。我々には、文脈が必要である。無作為性と不確かさは、抽象概念である。我々は、起きたことを尊重し、起きたかもしれないことは無視する。言い換えれば、我々は、浅く表面的であることが自然であり、本質を知らない。これは、心理学的問題ではない。これは、情報の主たる属性に起因している。月の陰の部分は、見えにくく、そこを照らそうとすると、エネルギーを必要とする。同様に、見えない部分に光を当てようとすることは、概念的にも精神的にも、エネルギーを要する。
 

白鳥と黒鳥

 あるとき発見された白鳥は世界中を驚かせました。それは間違いなく黒い白鳥だったからです。
「あり得るけれども、あり得ないとして処理してしまう事象」
本書の題名となったブラックスワンはそのような象徴として語られています。
 

ありえない

 9・11の映像はまるで映画のように現実味のないものでしたが、実際に起こってしまいました。これはありえないことだったのでしょうか?報復の範囲内であれば、想像ができますが、あまりにも突拍子のないことなので「あり得ない」こととして誰も何もしていませんでした。
 日本国内でいえば3・11がそれでしょう。「津波に街が呑まれた」「原発汚染」「漏れている」「東北の終わり」などと情報が錯そうしました。映像は東南アジアのどこかのように観えてしまい、東北だという現実味がありませんでした。
 人間はあり得ないことに出くわすと、現実逃避をしたり、すぐにでっち上げの説明を試みる傾向にあります。そしてそれを行うのは、統計や経済といった公式を大量に生み出す職業の人間には特に顕著だと、筆者は実体験から引用します。
 

意外に深刻だ

 筆者はトレーダーであり、哲学者で不確実性の科学を研究されており、世界中から注目されています(馬鹿らしいという否定的意見とともに)
私も序盤では、どうしようもないことを語っているという感想に満ちていました。しかし半分も読むと、深刻なテーマだと次第に気づかされていきます。本書はブラックスワンの実例と特徴をいくつも解説する形で進行します。人間はトンネルのように視野を狭めていく生き物です。そのほうがわかりやすくなるからです。同時に、何かを解説されると「本当に?」と疑ってしまいます。それでもブラックスワンは現れます。
 筆者は最後(19章)において、私たちもブラックスワンなのだと語り、筆を置いています。つまりブラックスワンに臆病になることはないし、かといって安易な説明で決めてかかるのでもなく、気構えくらいは持っておくべきことを意味しているのです。だまされるときはだまされる。だまされないときはだまされないようにしよう。本書は人間の考え方から抜け落ちたことを語ります。
 

しかし気怠い

 ただ一言言えば、長いです。読むのが途中で億劫になります。レイチェル・カーソン沈黙の春』は如何にアメリカがDDTなどの薬を使って自然を破壊したかということを延々と語りますが、アレに似た気怠さがあります。これならまだ『まぐれ』のほうがいいかもしれません。上下にわかれてもいませんしね。