On bullshit

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本、読み終えた。カレン・フェラン『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする』

 

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

 

 

 

 ボストン・コンサルティングマッキンゼーなどの、有名コンサルティングファーム出身者の著作が多くあります。

そして大人気です。
社内に問題を抱えない企業はないからです。
 
 そんな中、これは異色の本と言う他ないでしょう。
タイトルからして、
コンサルタントのやってることは間違いです。ごめんなさい」
ですから。
 
 しかし著者はMITと同大学院を卒業後、デロイト・ハスキンズ&セルズ、ジェミニコンサルティングなどの有名コンサルティングファームを渡り歩いてきた人です。
無視はできません。
 
 この本の中で著者が訴えるのは、問題を起こすのも解決するのも人間だということだと汲み取りました。
本書の中で繰り返されているのは、コンサルティングによって示されたモデルやデータなどは、必ずしもあてになるものでないばかりか、クライアントの会社をさらに混乱させ、倒産や買収という始末になるというものです。
 
 そして同時にコンサルティングが重要な存在であることにも言及し、クギを刺しています。
あくまで方法の問題だと。
 
 確かにやり方は人間が考えないといけませんね。
私はこういう経験があります。
とあるバイト先で時給の引き上げがありました。
人数が足りないから、求人を魅力的に見せようとしているんだという話になりました。
普通は喜ぶはずです。
しかし喜ばない人がいました。
 このバイト先は、筆記と実地のテストを受け、合格することで役職と時給がアップするという評価システムがありました。
その人はそれを受けて合格し、役職と時給が上がったばかりでした。
しかしその人の時給は、一律の引き上げによってテストを受けていない人と同列になってしまったのです。
時給を上げれば人が来るという考えの前に、すでにいる人のことは考えていなかったということです。
 
 若者たちにもビジネスにも、神扱いがあると思いますが、それをすぐさま信じるというのは危険なことです。
私たちはビジネスにおいて神から人、自然から人というように従う対象を変えてきましたが、ある意味また神(データ、企業、カリスマなど)から人へ、という神扱いをすることで、新たな隷属対象を作り上げてしまっているのではないでしょうか?
人から人への図式はまだまだ遠い道のりかもしれません。

 

 

 

 

●本書からの引用

本書を読んでくださった読者の皆さんに覚えていただきたいことはただひとつ。

メソッドやベストプラクティスやビジネスソリューションを実行する前に、それを実行したらどのような影響が出るかについて、あらかじめよく考えることだ。

他社がやっているからと言って、それを実行することが正しいとは限らない。

本書の要点はそれに尽きる。

 

 

 

 

●目次
はじめに:御社をつぶしたのは私です
■Introduction:大手ファームは無意味なことばかりさせている
コンサルは「芝居」で商売している
ビジネスは「数字」では管理できない
数人の「コンサル」が歪んだ流れをつくった
「確実に間違っている」理論の数々

■第1章 「戦略計画」は何の役にも立たない――「画期的な戦略」でガタガタになる
マイケル・ポーターが「武器」を生んだ
ジャック・ウェルチの怒涛の人員整理
分析を「グラフ」にするだけで感心される
「分析」に従わなかったから成功した
ポーターと「真逆」の理論
お得意の「人員削減」を自社で行うはめになる
大企業が「正しい経営」のせいで消える
ダメな戦略を生む「5つのステップ」
コンサルが去ったあとに残るのは「大量の資料」だけ

■第2章 「最適化プロセス」は机上の空論――データより「ふせん」のほうが役に立つ
謎の「保進係」の仕事
流行のメソッドを次々と使う
「ブラウンペーパー」というアナログな方法
単純な「話し合い」が効果を発揮する
ビジネスモデル自体に「問題」があったら?
頑迷なコンサルの「ツール」信仰
「ツール」が機能しない決定的な理由
「バカだと思われたくない」という問題

■第3章 「数値目標」が組織を振り回す――コストも売上もただの「数え方」の問題
「実行」するのはコンサルではない
人事評価も「ダッシュボード」で簡単に処理
なぜ目標を達成して「赤字」になるのか?
達成のために「評価基準」を変えてしまう
「会計」や「財務報告」は細工しほうだい
評価項目が無限に増えていく
問題は「最適化」ではなかった
組織が機能しない本当の理由
正しく動くと評価されない
指標の導入で「無意味な仕事」が増える
「革新的な製品」が生まれない仕組み

■第4章 「業績管理システム」で士気はガタ落ち――終わりのない書類作成は何のため?
マッキンゼーコンサルタントの(大外れの)予言
育児雑誌のように恐怖をあおる
自らつくった「業績管理システム」で大混乱
あけてくれても「書類」をつくる
面倒なうえ「能率」も落ちていくばかり
公正に見える「不公正」なシステム
98%の社員が「自分は真ん中より上」と思っている
なぜ「考課」で業績が落ちるのか?
「インセンティブ報酬」は逆効果を生む
BSCで報酬を出した企業の業績は平均以下だった

■第5章 「マネジメントモデル」なんていらない――マニュアルを捨てればマネージャーになれる
609ページ、433の項目を使いこなせ
グーグルが導き出した画期的な「8つの習慣」
データ主義のプレゼンテーションの結果
コーチング」と「フィードバック」だけでは育たたない
データマイニング」なしでもわかる4つの原理
グーグルVSスティーブン・コヴィー
要は「何」を言っているのか?
「マネジメント本」はまじめに読むとばかばかしい

■第6章 「人材開発プログラム」には絶対に参加するな――こうして会社はコンサルにつぶされる
コンサルタントエンロンをつぶした
社員は「ランク付け」できるのか?
一度の失敗が「致命的」になるシステム
スターはダメな部分も「魅力」に見えてしまう
研修を受けると「出世コース」から外れる
Aクラスの社員を「開発」しようとして失っている
ピーターの法則」はジョークではない
昇進すればクビになる
業績が悪い理由は「能力」より「環境」が大きい
直接聞けばいいことを「スコア」で判断する
人事のあらゆる問題を解決する方法

■第7章 「リーダーシップ開発」で食べている人たち――リーダーシップを持てる「チェックリスト」なんてない
「リーダーシッププログラム」はどれが正しい?
カリスマはなくても「優れたリーダー」になれる
ベニスとガードナーのあげるバラバラの「条件」
リーダーシップの「本質」がさっぱりわからない
アセスメントで出た私の「長所」と「短所」とは?
こんなにマスターできる人間はいるのか?
なぜ「精神病質者」は偉大なCEOになれるのか?
人格者は成功しないのか?
謝罪したい「スキル開発」研修の実態
何でも得意になろうとして「凡庸」になる

■第8章 「ベストプラクティス」は“奇跡"のダイエット食品――「コンサル頼み」から抜け出す方法
「科学的管理法の父」のまちがい
「お手軽なステップ」をいつまでも繰り返す
頭を使いたくないからコンサルに決めさせる
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コンサルタントの「使い方」